日本全国 能楽キャラバン!

大槻文蔵が舞う!

今回の公演では、復曲の「巴園」と
新作の「蛙ヶ沼」の2曲を上演いたします。

いつもの能とは少し違った趣のテーマや
仕掛けをお楽しみ頂ける曲目です。


能は、人々の生きる喜びと共に人間とは、
を問いかける演劇です。

是非とも両曲を見比べながら御覧頂きたいと思います。

2022.12.24 巴園 2023.1.28 蛙ヶ沼

復曲能とは

能は700年の歴史の間に約2000曲余りの作品が創られてきましたが、現在、能の公演で演じられている多くは「現行曲」と呼ばれているもので、その中の約250曲です。
一方、その他の作品は「廃曲」といい、現在上演されていない能を指します。
この「廃曲」を復活上演することが「復曲」です。
数多の作品が廃曲になった理由は定かではありませんが、これら廃曲の中には、とても面白く、現代に訴える力のある能も含まれています。
これらの曲を復曲上演することはとても意義あることですが、それには大変な時間と労力を要します。

新作能とは

新作能は新しく書き下ろされた能です。
復曲の場合は台本(詞章)がある程度残っていますが、新作は台本作りから始まります。曲によって色々と違いがありますが、上演までには相当な過程を経ねばなりません。

再演を重ねる

そして初演された復曲も、新作もその後の再演がとても大事なことです。
何度も舞台に掛けられ、又違う演者が演じ、様々な意見や批評が出て、見直しが行われ、それによって作品が練られていくのです。
「鷹姫」という新作能は50年程前に初演され、その後色々な演者によって何度も演じられ、色々違う演じ方も試みられ、今では新作の代表として人気を博しております。 今回の公演は、その大事な再演の役目を担った公演です。

「巴園」は2006年に大阪にて初演、その後2013年に横浜で再演。「蛙ヶ沼」は1999年に大阪にて初演、同年に東京で再演されました。
今回の再上演は更なる検討を加えての上演です。是非とも皆様のご意見、ご感想をお願い申し上げます。

巴園

巴園 ばえん

観世小次郎信光(1456-1516) 作

所は中国、漢の国の時代のお話。
巴園という片田舎の村の古木が、奇端を示しているということで、帝の勅使が巴園へと赴く。
巴園には園を守る老夫婦(翁・姥)がおり、勅使に奇端の様相を物語ると、一夜に大きな実をなした橘を見せる。
勅使は帝へ報告に帰ろうとすると、古木の中から「待て……」と声が掛かる。翁は、それでは酒宴を開き待ちましょうと園の奥へと立ち去る。
やがて翁は老仙人となり、仙女を伴い、甘酒と果実の実を帝へ捧げる。そして持っていた杖で橘の実を叩くと三つに割れ、仙童達も現れる。老仙人と仙女・仙童達は帝を讃え、舞を舞い、豊かな御代を讃えるが、やがて帰ろうと老仙人の杖を虚空に投げれば、たちまち青龍へと変じ、仙童達はその青龍に乗って仙境へと帰って行く。

能は舞台装置(大道具)を原則用いません。
しかし、最小限必要なもの(イメージとして必要なもの・舞台展開上必要なもの)を作り物と言い、主に竹材と布で役者たちが作り舞台へ出します。

「巴園」では、能には珍しい大掛かりな作り物が用意されます。
巴園の園にある大きな橘の実で、後半それが割れると仙童が現れ、仙境を表現するこの曲専用のものです。お楽しみになさって下さい。

蛙ヶ沼

蛙ヶ沼 かわずがぬま

堂本正樹(1933-2019) 作

世の終わりまで  この池の蛙となって
千年に一度 人の言葉を授かる外我がなせし業を  鳴き声にて
悔み嘆けよと  叫ぶと同じく女は輝く女神と 我らは醜き蛙と変じたりけり

神の示しにより、デイロスの浮島を訪れた巫女。
清水を飲もうと立ち寄った沼で出会った男は、人とも獣ともつかぬ言葉を話す。
それは昔、この沼を訪れた美しい女に、里人たちはよこしまな想いを持ったが拒まれた腹いせに、女が飲もうとした水を、池に入り掻き濁して妨害をした。
女は憤り、ゼウスに祈り、男どもを醜き蛙に変身させた。
男はその変身させられた蛙である。
言葉が通じないという、永劫の苦しみに陥った男の行末とは……。
ギリシャ神話から創り上げた堂本正樹の新作能。

蛙ヶ沼では三尺(約91cm)四方のこれまた特殊な作り物が出され、その内側は沼を表現しています。
しかし、後半の場面になり作り物に掛かっていた布(引廻し)が外されると、舞台全体が沼、ないし沼辺となります。
その舞台転換は、演技と共に進行しますが、観客の皆様の想像力が必要となります。

能のワキ・ワキツレは男性の役です。現実に生きている男性の役なので、能面は用いません。
しかしこの蛙ヶ沼ではワキは巫女の役で登場します。唯一の女性の役です。
どのような姿で現れるのか、これもお楽しみになさっていて下さい。

大槻文藏

大槻文藏

シテ方観世流能楽師。1942年生大阪府出身。祖父十三、父秀夫および、観世寿夫、八世観世銕之丞に師事。
1947年「鞍馬天狗」にて初舞台、1998年「檜垣」、2007年「関寺小町」、2012年「姨捨」にて三老女を完演する。
また多くの復曲能、新作能にも積極的に携わる。

主な受賞:松尾芸術賞優秀賞(1996)、読売演劇大賞男優賞(1997)、芸術選奨文部大臣賞(2000)、紫綬褒章(2002)、旭日小綬章(2013)、日本学賞(2015)、重要無形文化財保持者各個認定(人間国宝2016)、日本芸術院賞受賞(2017)、文化功労者選出(2018)。

役職:公益社団法人能楽協会大阪支部相談役、大阪能楽養成会副会長、公益財団法人文楽協会評議員、大阪文化芸能国民健康保険組合理事長、大阪観光大使、公益財団法人大槻能楽堂理事長。

のう えものがたり

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