屋島(八島) ― やしま ―

  • 作者 世阿弥
  • 素材 『平家物語』巻十一
  • 場所 讃岐・屋島(香川県高松市屋島)
  • 季節 春
  • 演能時間 約1時間30分
  • 分類 二番目 修羅物

■登場人物

前シテ・・・漁翁

面:笑尉、朝倉尉、三光尉の類
装束:尉鬘、無地熨斗目 または小格子厚板・水衣・鍛子腰帯・腰蓑・墨絵扇・釣竿

後シテ・・・源義経の霊

面:平太
装束:黒垂・梨打烏帽子・白鉢巻・紅入厚板・半切法被 紋腰帯・太刀・勝修羅扇

ツレ・・・漁夫

装束:無地熨斗目または段熨斗目・ 水衣・緞子腰帯・墨絵扇・数珠

ワキ・・・旅僧

装束:角帽子・無地熨斗目水衣・緞子腰帯・墨絵扇・数珠

ワキツレ・・・従僧

装束:角帽子・無地熨斗目水衣

アイ・・・屋島の浦人

装束:狂言上下

■あらすじ

都の僧が従僧を伴い讃岐国・屋島の浦へ着き、日も暮れてきたので塩屋に立ち寄り待っていると、主である漁翁と若い漁夫が帰ってくる。僧一行は一夜の宿を乞うと断られるが、都の者だと知り懐かしみ泊めてくれる。僧の頼みで漁翁は屋島での源平合戦の様子を語り出す。義経の勇士ぶり、景清と三保谷の錣引、佐藤嗣信が義経をかばって能登守教経の矢先に倒れた最期など、余りに詳しく語る漁翁に旅僧が名を尋ねると、義経の霊であるとほのめかし消え失せる。塩屋の本当の主が現れ屋島の合戦のことを聞き眠りにつくと、甲冑姿の義経の霊が現れ「弓流し」の様を再現し、修羅道での責苦の戦い、また教経相手の激戦の様子を語るが、夜明けとともに消え失せ浦風だけが残っていた。

■みどころ

『平家物語』の有名な屋島の合戦を題材にした代表的な修羅物。軍話を中心に勝利者側からのさわやかな作品。前場では屋島の浦ののどかな景色を背景に古戦場の哀愁や漁翁の懐かしい昔話、後場では一転して現実の戦場の様子を見せる。

■ワンポイントアドバイス

古名は「義経」。
『屋島』『田村』『箙』は勝修羅三番と呼ばれる。
観世流以外では曲名を「八島」と表記している。

■語句解説

弓流し・・・海に落とした弓を義経は体格が小さかったので、敵に取られ流された弓が弱弓だと恥じをかくことを逃れるため、身を捨てて危険を冒して拾い上げた。

■小書

弓流(観世・喜多)
大事(観世) 素働(観世) 脇留(観世)
那須の語(大蔵) 奈須与一語(和泉)
嗣信の語(和泉)

■舞台展開

  1. 旅僧(ワキ)と従僧(ワキツレ)の登場。都から屋島の浦にやって来る。日が暮れてきたので、塩屋で一夜を過ごそうと思う。
  2. 漁翁(シテ)と漁夫(ツレ)の登場。釣竿を手に、屋島の浦の長閑な春の景色などを謡いながら、塩屋へと帰ってくる。
  3. 塩屋の主が帰ってきたのを見て、旅僧たちは一夜の宿を借りるため漁翁に頼む。塩屋の内が見苦しいからと一度は断る漁翁だったが、一行が都の人だとわかると承知し、中へ案内する。そして、都を懐かしんで涙に咽ぶ。
  4. この所は源平の合戦の巷と聞いているので語って聞かせてほしいという旅僧に促され、漁翁は屋島の合戦の話―源義経の雄姿をたたえ、景清と三保谷の錣引、佐藤継信と菊土の壮烈な最期などを物語る。
  5. あまりに詳しい話に不思議に思った旅僧が名を尋ねると、漁翁は義経の名を何となくほのめかして消え失せる。
  6. 屋島の浦人(アイ)の登場。屋島での源平合戦の様を語る。
  7. 夜、夢での再会を待っている旅僧の前に、義経の幽霊(シテ)が現れる。成仏できず昔の合戦の地に戻ってくる業因の深さを歎き、深い妄執を僧の夢の中で語ろうと言う。
  8. 義経の霊は波に流れた弓を敵に取られまいと拾い上げた「弓流し」の模様を再現する。
  9. 修羅道の苦しみの時がきて能登守教経との激しい戦いの様を見せる。やがて夜明けとともにその姿は消え、屋島の浦に朝嵐が吹くのみであった。

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曲目解説