野宮 ― ののみや ―

  • 作者 金春禅竹の可能性が高い
  • 素材 『源氏物語』賢木の巻
  • 場所 山城・嵯峨・野宮(京都市右京区嵯峨野宮神社)
  • 季節 秋(旧暦九月七日)
  • 時代 平安時代の想定
  • 演能時間 約2時間
  • 分類 三番目物

■登場人物

野宮
前シテ・・・里女
面:若女・節木増、孫次郎または小面
装束:摺箔唐織−着流・鬘扇・木葉
後シテ・・・六条御息所の霊
面:前シテに同じ
装束:長絹・色大口・鬘扇
ワキ・・・旅僧
装束:角帽子・無地熨斗目・水衣−着流・数珠・墨絵扇
アイ・・・ 嵯峨野の者
装束:素袍上

■あらすじ

晩秋の嵯峨野の野の宮。木枯しが吹き、木々も色を失い物淋しい秋。ここを訪れた僧の前に現れた女は、今日は長月七日野の宮の神事の日なので帰れと言う。僧の問いに女は答える。光源氏の愛を失った六条御息所は斎宮となった娘と共に伊勢へ下ることを決め、禊の為に野の宮に籠っていたところを光源氏が訪れ、様々と慰留をしたが、もう二度と辛い思いをしたくない御息所は娘とともに伊勢へ下ったと語る。詳しい物語にいぶかる僧に名を明かした御息所の亡霊は黒木の鳥居に辺に消え失せる。
所の者の勧めに従い菩提を弔うと、在りし日の姿にて網代車にのり御息所の霊が現れる。その車は賀茂の祭の時、源氏の正妻葵上の車と御息所の車の据える場所の争いで恥辱の因縁深い車であり、光源氏と巡り会い恋に堕ち、捨てられた悲しみ、苦しみ、それ等は妄執となって迷妄の世界から離れられないこの苦しみを救って呉れと頼み、再び車にのり消え去ってゆく。

■ワンポイントアドバイス

恨みつつも恋しさがつのる屈折した女心。高貴な身分であるがゆえ、自制しようとするが抑え切れない嫉妬心は生霊となり葵上の枕辺にさまよい恨みを述べる。
「野宮」には「葵上」の様な外に表れる激しさはないが内に秘められた思いの強さは死後の世界までも延々と続き、僧の弔いにも成仏し得ない深い妄執である。うら枯れ草葉の荒れ果てた野宮の情景は御息所そのものである。
「心の色・身に沁む色・変わらぬ色・思いの色・同じ色・露の色」など御息所の心の中の色がどの様に表現されるでしょうか 。

■小書

車之伝(宝生)、車出之伝(金剛)、車出(喜多)、平調返(観世)、
破舞留(金春)、千之掛(観世・金剛)、火宅留(観世・金春・金剛)、
合掌留(観世・宝生・喜多)

■舞台展開

  1. 後見によって鳥居の作り物が出される。
    舞台は嵯峨野の野宮神社となる。
  2. 諸国を訪ね歩く旅僧が登場、野宮の旧跡を訪ね心静かに詣でる。
  3. 一人の里女が現れ、晩秋のもの淋しい情景を述べ、我が身の上を嘆く。
  4. 旅僧と里女の対話。光源氏が最後に六条御息所を訪ねたのは九月七日の今日であったと知らされる。里女は昔を偲びつつ物語る。
  5. 僧に乞われ、なおも六条御息所との心情を切々と語る。
  6. あまり詳しい物語に僧は女の名を尋ねると、女は自分が御息所であると告げ、鳥居の陰に消え失せる。
  7. 所の者が出て、僧に御息所のことを語り、弔うように勧める。
  8. 旅僧は夜もすがら御息所を弔う。
  9. 御息所の亡霊が、加茂の祭りのおり、葵上の従者達によって押しやられた屈辱の車にのって現れ、深い妄執を晴らしてくれと頼む。
  10. 昔を思いおこして舞を舞う。そこには光源氏の来訪と別れの思いが様々に交錯する。
  11. 御息所の霊は、浮かび得ぬ身は神の意にも添わぬことであろうと言い、再び車にのって出て行く。この迷い、御息所の霊は果たして火宅の門を出たであろうか。

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曲目解説[Stories]