班女 ― はんじょ ―
- 作者 世阿弥
- 素材 『班しょう』(はんしょうじょ)伝説
- 場所 前:美濃・野上(岐阜県不破郡関ヶ原野上)
後:都・下賀茂神社(京都市左京区泉川町下鴨神社)
- 季節 秋
- 時代 不明
- 演能時間 約1時間20分〜30分
- 分類 4番目物 狂女物 大小物
■登場人物
前シテ・・・遊女・花子
面:若女
装束:唐織−着流
後シテ・・・狂女・花子
ワキ・・・吉田少将
装束:長絹・白大口・風折烏帽子
ワキツレ・・・従者
アイ・・・野上宿の女主
装束:縫箔・女帯・美男鬘
アイ・・・信俊の供人
■あらすじ
美濃の野上宿の遊女・花子は、ある時東国へ行く途中で宿に泊まった吉田少将と契りを交わし、その折に取り 交わした形見の扇ばかり眺め入り、他の座敷へは一向に出ようとしないので宿の女主は花子を追い出してしまう。 東国からの帰りに宿に立ち寄った少将は花子の不在を知り、戻ったならば都へ来るよう伝言し、都へ戻って下賀茂 神社に参詣にいく。そこへ班女と呼ばれる物狂いがやって来るが、それは少将への恋慕がつのり狂女となった花子 だった。従者に面白く舞ってみよといわれて、形見の扇を手に玄宗と楊貴妃の故事を語り(班UZ)、扇と共に捨て られた悲しさと少将のつれなさを恨み狂おしく舞う。扇に気付いた少将は自分の扇を出してお互いを確かめあい、 再会を喜んでもとの契りを結ぶ。
■みどころ
純粋な恋慕の情を主題とした作品。扇を小道具とすることで風流な味が一層強まる。捨てられた悲恋の象徴であり、 再会できるきかっけとして扇は重要な存在となる。
■語句解説
『班しょう』(はんしょうじょ)・・・前漢の成帝の妃。略称が班女。 後にきた趙飛燕に帝の愛を奪われ、寵愛を失ったあと、秋になると捨てられる夏の扇に我が身をたとえて 嘆きの詩をつくった。以来、捨てられた女を「秋の扇」と呼ぶようになった。
■小書
笹之伝(観世・金剛)
替之型(観世) 彩色(観世)