蟻通 ― ありどおし ―

  • 作者 世阿弥
  • 素材 『貫之集』『俊秘抄』
  • 場所 和泉・蟻通神社(大阪府泉佐野市長滝)
  • 季節 春 4月
  • 時 平安時代
  • 演能時間 約1時間
  • 分類 4番目物

■登場人物

シテ・・・宮守・蟻通明神の化身

面:小牛尉又は小尉
装束:翁烏帽子・縷狩衣・白大口・尉扇・幣・傘・松明

ワキ・・紀貫之

装束:風折烏帽子・単狩衣・白大口・男扇

ワキ・・従者

装束:無地熨斗目、素袍上・鎮扇

■あらすじ

紀貫之が従者を伴い和歌の神をまつる紀伊国の玉津島へ参詣に行く途中、俄に大雨が降り出し 馬も動かず困り果てます。すると老人が手に傘と松明を持ち現れたので声を掛けると、蟻通明神の 社地に馬も下りずに通ろうとしたお咎めであろうと言われます。鳥居や神殿に気付かなかった貫之 は畏れ入り、老人が勧めるままに歌を詠ずると、老人は歌を褒め和歌の六義を物語ります。貫之 が和歌の謂れを述べると馬も再び起上り、神のお許しがあったと喜び、宮守に祝詞をあげてくれる よう頼みます。宮守は祝詞を奏して神楽を舞い、実は自分は蟻通明神であると告げ消え失せます。 奇特を見た貫之は感激し、夜明けと共に再び旅立ちます。

■みどころ

貫之の和歌が神の怒りを静めたという、和歌の徳が主題。神が題材になっているが、4番目として 扱われている。世阿弥の作でまだ複式夢幻能(前後2場)の形式が確立されていない頃の作と考え られ、1場面で曲が完結している。シテが傘と松明を持つのは珍しい。ワキに型が多く重い習いとなっている。

■小書

故実(観世) 真之働(金剛) 岩戸之舞(喜多)

蟻通神社

唐から七曲の穴の空いた玉が送られ、その穴に縄を通せという難題がだされた。 蟻に細い糸を結び、玉の穴の反対側に蜜を塗り、蟻が蜜をめがけて見事穴を通った。 この難問を解いた中将が後に神となりまつられたのが蟻通神社であるという伝説。

曲目解説